27.コンフィチュール

札幌の街路樹はナナカマドが多く、それが赤や金の葉を落とし始めると、札幌の秋もたけなわです。果樹園は夏のベリー類が一段落すると、9月のプラム、プルーン、ぶどう、10月の梨、11月の晩生リンゴまで休みなし。北国の秋は、旬に追われて駆け足で過ぎるのです。

果物の色と味をとどめる食べ物=ジャムをフランスふうにコンフィチュールと呼ぶのはここ数年のこと。当初は「ジャムとどう違うの?」ととまどう声もありましたが、お菓子屋さんで広まるにつれ、私たちお客の耳にもすっかりなじんできましたね。

この呼び名、単なる英語とフランス語の呼び名の違い…のはずでしたが、日本では特に、短時間で炊き上げて鮮やかな色と香りを残したタイプを指すことが多いようです。果肉の形が残るプレザーブスタイルや、砂糖のかわりに果汁で煮詰めたもの、ジュレのなかにフルーツを浮かべたもの、果物にスパイスやハーブ、チョコレートを組み合わせたお菓子的発想のものなどが注目されています。数々のスイーツブームを仕掛けてきた伊勢丹本店がフランス・アルザスのパティスリー「クリスティーヌ・フェルベール」のコンフィチュールを紹介したのも、ブームのきっかけでした。(今ではアルザスの品が日本各地のデパートに!おいしくて嬉しいけれど、ちょっと不思議なことです。)

アンジュでは、札幌市南区の果樹園数軒に通い、その時々の旬の果実をジャムにしています。この地区の果樹園は観光客のつみ取り果樹園が多いため、早摘みでなく、木の上で完熟した状態で手に入れることができます。熟度を見計らって天気予報をにらみながら日を決め、一面に鈴なりになったイチゴやプラムを選りすぐり、その日の内に加工します。たくさんの試作を通してこれと思う品種を探し出し、おいしくするのが作り手の腕の見せどころ。農家の仕事は「まるで年一回の賭けのよう」と言いますが、アンジュのコンフィチュールづくりも年に一度しかチャンスのない探求の繰り返しで、5種類になりました。

先日、古い本の頁から小さな紅葉が出てきました。押し葉をつまんだ手でその頁を繰っていたら、ふっとその頃の記憶がよみがえります。キラキラと透明なコンフィチュールも、もしかすると陽の光や夏の匂いを思い出すためにあるのかもしれませんね。

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