30.シュクレ・サレ

ざらめせんべいのように甘しょっぱい味というのは、誰にでもおいしく感じられるものですね。

以前、日本女性と結婚したイタリア人の料理人に、日本は料理に砂糖を入れるから…と言われてハッとしました。砂糖やみりんで主菜を甘くするのは、アジア特有だといいます。ポルト酒や果物の甘みを使う料理はOKでも、すきやきや肉じゃがのように「砂糖と醤油で煮込む」のが衝撃だったとか。

一方、洋菓子にはシュクレ・サレ(甘くてしょっぱい)の味があり、日本でも好まれています。クイニー・アマンなど、まさに塩があってのおいしさ。地方菓子にあるということは、シュクレ・サレな味はその土地の素材に由来しているのでしょう。

C.B.S=キャラメル・ブール(バター)・サレ(塩)の商標を持つ「アンリ・ルルー」の塩キャラメルも、シュクレ・サレなお菓子。ローマ時代から塩田があったという「ゲランドの塩」の産地・ブルターニュのお店で、土地では有塩バターがよく使われるそうです。

バターの香り高いなめらかなキャラメルは、チョコレートとキャラメルでフランス指折りのルルー氏ならではの一品。来日時に笑顔で店頭に立つルルーさんの姿を見ると、海岸に村が点在する鄙びたリゾート地のお店が東京のデパ地下で引っ張りだこの景色に、何か不思議な感じもします。生まれ故郷から移植されてもなお、絶対的においしいのは確かですが…。

アンジュのキャラメルは、作り手が度々訪れる、美術館のある漁村・岩内(いわない)の海洋深層水を使った「塩匠・粉雪」と、道産生クリームとバター、そしてばれいしょ(ジャガイモ)でんぷんから作った旭川産の麦芽水飴でできています。あまり焦がさずに白っぽく仕上げているのも品が良く、舌にのせるとスッと溶けてなくなってしまう、癖のない後味。あまりに溶けやすいため、厨房では冷凍で保管しなければなりません。厨房にあるゲランドの塩でなく、敢えて地元の塩の中から選んだのは、海と草地のある沿岸地帯を身近に感じているからなのでしょう。

味の探求の一角に「素材の背景」を持つ品が案外少ない中で、この小さな貝の形のキャラメルは、ここだけの小さな愉しみです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.