31.「お取り寄せ」とお菓子

女性誌の定番テーマ、「お取り寄せ」。その中にはお菓子も欠かせませんが、日持ちがする、冷・解凍に強い、こわれにくいなどさまざまな制約がつきもの。特に顔の見えないネット通販では、買った人の状況がどうであっても間違いないよう、念には念を入れた状態で届かなくてはなりません。通販商品にチーズケーキが多いのも、実はこうした制約をクリアできるから。多くのチーズケーキのベースになるクリームチーズには離水を防ぐための安定剤が少量含まれていて、ケーキの冷凍に向くのです。そんなわけで、製造の現場では「宅配でもおいしいお菓子」づくりに頭を悩ませています。

でも、困った時は昔の智恵にちゃんと答えがあるもの。冷凍便などない時代、旅に持って行ったというのが、「ガトー・ド・ヴォワイヤージュ」と呼ばれるお菓子たち。たとえばガトーバスクや、ケークの類がそうです。私が昔習った同名のお菓子は、焼いて1〜2日経ったほうがおいしいアーモンド粉入りの焼き菓子。表面にうすくジャムを塗った上、べたつかないよう砂糖衣を掛けてオーブンで乾かしていました。

健康的で種々の効能あらたかな甘味料・トレハロースをはじめとする各種の技術は、「本来日持ちしないものを長くおいしいままで」というニーズを驚くべき完璧さで満たしてくれました。けれど本当に必要な場面以外でも使われるようになった今、本来の味覚とはどこかが違う気がしてなりません。オーブンから漂う匂いやフレッシュな食感、熟成させてこそ出せるまろみのある重厚な味……。そんな目に見えないものこそ、きっと食べものがくれる癒しとエナジーなのです。

魔法はいらない、人の手のぬくもりのあるお菓子がいい。フルーツケーキ、シュトレンしかり、昔の智恵で日持ちがするお菓子は、秋から冬のこれからが食べ頃です。

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